2016年下半期で ” 旬 ” の変態ガジェットといえば、クラウドファンディングの400ドルほどで買えたGPD WINだ。私は、OASYS pocket、モバイルギアやHP100XL、とある個人が1台7万円のお金だけ集めて作れなかったLinuxのポケットPC詐欺…、過去に何度も何度も痛い目にあった経験から、親指で押すキーボードのパームトップPCは絶対に買わないと決めている。

 今回は、

2万円で投げ売りのキングジムのポータブック XMC10買ったのでレビューする。

XMC10

 結論から言うと、

XMC10は、ジャストA5サイズの分厚いWindows 10のネットブックで2万円以下で買えれば損した気にはならない。

ネットブックとは?

 「ネットブック」は、10年ほど前に流行ったメールやブラウズ専用のB5サイズのノートPCのことを言う。代表的なのがASUSのEeePCだった。CPUもIntel Atomで、3〜8万円くらいで買えたものだ。

 ほどなくして、iPadが大ヒット、それを真似たAndroidのタブレットが瞬く間に普及し、ネットブックは、あっという間に消え去った。

MindTopの二つ折れキーボード

 昨年2015年の暮れに、キングジムのXMC10というネットブックの発売を知った。工業デザイナーの川崎和男氏がApple Computer社からPowerBookのデザインを依頼されて作ったMindTopのプリエ式キーボードに、そっくりなデザインに興奮した。

 XMC10は、博物館入りしているMindTopによく似ていて、そして二昔前に流行ったネットブックのレトロ感たっぷりのオッサン ホイホイ・ガジェットだ。

 XMC10のスペックは、

  • サイズは、15.3 x 20.4 x 3.4 cmのA4サイズ、厚さが3cm超え
  • 重さは830gと見た目以上に重い。
  • 画面サイズは、8インチで、1280×768のWXGA
  • Intel Atom x7-Z8700 1.6GHzのデュアルコアクアッドコア(4コア)
  • RAMは、2GB
  • フラッシュメモリが32GB
  • 有線LANポートは持たず、無線LANは、2.4GHzのIEEE802.11bgn
  • 起動は30秒、スタンバイからの復帰は2秒(ログイン作業時間は別)
  • 液晶部蓋は、120度まで展開可! 180度までは開かない。
  • 定価10万円!

 こんな時代遅れのネットブックに定価10万円はあり得ない。高すぎて買えなかった。
 portabookタスクマネージャ

 キングジムといえば、ポメラシリーズが有名だ。ポメラが、発売直後の価格が4万円程度で売られていても、そのうち半額以下で売られるようになるので、ポータブックXMC10も半額以下で売られるようになったら考えようと思っていた。待つこと1年、案の定の2万円で投げ売り。Amazonでも、2万3千円で売っているので買った。

ポータブック XMC10のフォトレビュー

XMC10-1

 本体、充電用のmicroBーUSBケーブル、ACアダプター、取説、クイックスタートガイド、保証書、Office 365 サービスプロダクトキーが入っている。Office 365のプロダクトキーだけでも、1年分の12000円相当なので、オマケで1万円のXMC10一式が付いてきたと思えば安いよね。

外箱は黒い凝った化粧箱で、コストがかかるものだった。こんなところにお金をかけるより、販売価格を最初から5万円以下で売るべきだった。

XMC10キーボード

 このXMC10というネットブックの最大のセールスポイントは、二つ折れのキーボードが回転しながら合わさる仕組みにある。工業デザイナーの川崎氏は、バレエの足の開き方にちなんで「プリエ式」と名付けた。Apple Computerは、このプリエ式のキーボードをPowerBookに採用することはなくボツになってしまった。しかし、そのモックアップは博物館の収蔵物になっている。

 XMC10を開発したキングジムの担当者はSONYの元社員だったという。おそらく、プリエ式のキーボードのポータブルPCを博物館や図鑑で見るモノではなく、使えるカタチで世に出したかったんだろう。

 XMC10のキーボードは、キーピッチが18mm。普通のキーボードが19mm、ブラインドタッチができる限界のキーピッチが17mmなので、その間を取った形になっている。

 実際に両手をキーボードに両手をおいて、打鍵してみている。カタつくことなく、しっかりと打てるのは評価できる。

XMC10キーボードフチ

 ただし、親指でスペースキーを押すときにフチに当たってしまう。これはかなり致命的なデザインだ。デザインを重視したために、こういう細かい、すり合わせができていなかったと思われる。

さっそく、XMC10のEdgeでライブドアブログにアクセスして、ブログの記事の続きを書いている。

ATOKを入れてみた。ATOK Passportに入っているので、ATOK Syncを使って、辞書登録などが反映されると、文字入力が快適になる。

 老眼には厳しすぎる8インチ液晶のWXGAパネルで、長時間この液晶を凝視することはできない。それでも、紛れもないWindows 10のもっさりとしたポータブルPCである。うーん、微妙すぎる。こんなデキソコナイを5万、6万円で売ってはいけない。

 Office 365を自分のMicrosoftアカウントに登録することで、Officeのフル機能版、OneDrive、Skypeの電話への60分無料通話などが使えることになる。

SDカードスロットに、SDカードが完全に入らない

XMC10SDカード

MacBook ProでもSDカードがボディの中に完全に収まらない仕様になっているが、このXMC10も、同じように収まらない。

SDカードアダプタとSD SDカード交換 SDカード1

 そこで、MacBook Proと同様に、microSDカードにして、ボディに収まる短めのSDカードアダプターを使うという方法で、SDカードを使う。

 SDカードを挿したら、SDカードへデータを書き込むように設定をする。

 なにしろ、本体のフラッシュメモリ(Cドライブ)が32GBしかないので、Windows 10のOSだけで20GBを使っていて、残りが10GB弱しかない。SDカード側にデータ類を保存することで、本体のフラッシュメモリ(Cドライブ)の空き容量をこれ以上減らさない努力が必要だ。

SDカードへ保存

 Windows 10のアップデートを考えるとCドライブには最低5GBの空きが欲しいので、早めにSDカードを挿して切り替えておくことをオススメしたい。

 元々、容量が無いためか、ありがちなお試し版みたいなソフトは入っていなかったが、キャンディーソープがあったので、これはSDカードへ移動できたので移動しておいた。

XMC10背面

背面のカバーを下に開くと、カバー自体がチルトスタンドになって、傾斜がすこしだけ付くようになっている。

 ビジネス用途を意識しているので、外部出力端子もHDMIとVGA(DSub15ピン)が付いている。USB2.0ポートも一つだけあるので、有線LANアダプターをつないで有線LANでつなぐこともできる。

USBLANアダプタ

 千円程度のUSBーLANアダプタで、Wii Uで使っていたものがそのまま流用できるので便利だ。さらに、FAXモデムをつなげばFAXも可能だ。

 USBケーブルで本体を充電しながら、USBーLANアダプタでネットにつなぐことでWindows Updateのダウンロードが速くできる。

アップデート

在庫処分だから、Windows 10もVerが古い。さっさと最新の状態までもっていきたいが、チンタラと時間だけがかかる。

XMC10アプデート中 v1607

 Ver1607にするためには、内蔵の32GBの残り8GBでは容量が足りないとダイアログボックスがでて、SDカードのDドライブを割り当てなければ、更新できなかった。

ポインティングデバイスは、キーボードの真中にある「フィンガーマウス」

 G、H、Bのキーの間に、光学式センサーが付いていて、指でなぞると、マウスが動く。

フィンガーマウス

スティック式なのが昔あったけど、これの光学センサーになったということだな。 光学式マウスをひっくり返して、センサー部を指でなぞるのと同じだから、マウスが滑らかに操作できない。

不便なスクロールボタン

 タッチバッドになれていると、スクロールが、ボタンを押して上下にするだけという、ヘンテコさに戸惑ってしまう。それに、ブラウザでは使えるけど、Explorerとかではスクロールができないところもあるし、フィンガーマウスの使い勝手の悪さも加わって、萎える。至る所で、「なんだなかー」という使い勝手の悪さがあるから、ほめようがない。大学や高専の文化祭の展示デモ機じゃないんだから。発売当時の、レビューを書かされたライターも、提灯記事が書きづらかっただろうと同情したい。

XMC10の処理能力は、ネットブックとしては十分。

vlsを使う

 Intel Atom1.6GHzのCPUと内蔵グラフィックの能力をテストするべく、PC録画機(PTシリーズ)のSMBサーバにある、tsファイルをWi-Fi経由でVLCで見てみている。

 デインターレース処理もできているし、スライドバーを前後に動かしても動画再生に支障がなく、左右のスリットがステレオスピーカーなので、そこそこの音で動画も見られることが分かった。WXGAパネルなので、720pでの表示になる。

 もちろん、YouTubeも720pHDで見られる。

 それにしても、この程度のスペックはAndroidのタブレットなら、ずっと前から満たしている。かといって、Windows 10のタブレットで物理キーボードのセットとなると2万円前後で収まるものがない。

Wi-Fiは、2.4GHzのIEEE802.11g

Wi-Fi Wi-Fi-1

 残念ながら5GHz帯の11aや11acには対応していない。それでも、録画したtsファイルをWi-Fi経由で見るのには支障がない程度の速度はでているので、良しとするしかない。

格安Androidスマホと格安SIMのテザリングでXMC10をネットにつなぐスタイル
XMC10とスマホ

 スタバでiPhone 7をテザリングにして、MacBook ProをWi-Fiでつないでネットサーフィンというのは、もう古い。これからは、1万円で買える格安Androidスマホでテザリングしつつ、このXMC10をWi-Fiでつないで使う。10年ほど前に流行ったネットブックの理想的なスタイルが、十年の時を経て完成する(笑)。

 そろえるコストは、格安SIMAndroidスマホがセットで2万円、このXMC10が2.6万円、5万円以下になる。

Bluetoothも一通り使える。

  Bluetoothも、マウスや外部スピーカや、ヘッドセットをつないで使える。この辺の操作については、Windows 10のノートパソコンそのものなので、特筆すべき点もない。

XMC10でのブログ更新はWindows 10のノートPCと同じ。でも目が痛い。

xmc10でブログを書く

 8インチで、WXGAというのは、老眼には厳しいものがある。しかし、物理キーボードが本体にリジッドなのは、使い勝手が良い。日本語JISキーボード配列なのも、うれしい

iPadAir2とHHKB

 AndroidタブレットとBluetoothキーボードや、iPad Air 2とBluetoothキーボードとの使い心地とは、一線を画する。まだ、Androidの場合は、ATOK for AndroidがPassportでSyncできて使えるからマシだ。

 iOS(iPad Air 2)では、未だにBluetoothキーボードを選択するとATOKが選べない。Appleって、ほんと、こういうところが全然ダメ。

 iPad とBluetoothキーボードでノートパソコンの代わりになるっていうブロガー(とその仲間達)を見かけたら、ソイツらの言うこと(ブログ記事)は過去にさかのぼって嘘だと疑うべきである!

 こんなに使えない組み合わせは他にないから。→ アフィリカスの互助会連中が慌てて、iOSデバイス&BTキーボード絶賛アフィリ記事を変更・削除しつつMacBook Proへの買い換え等に走っているのが笑える。胡散臭さを無くしたいのだろうが、今頃になってMacBook Proを買うような、おマエラこそ胡散臭いわ。

XMC10のBIOSやドライバーの更新について

xmc10アップデート XMC10ーBIOSアップ

一応、念のためにキングジムのポータブックXMC10のサポートページをチェックして、BIOSに関しては、アップデートをかけておいた。

 ドライバーソフトは、最新のものが入っていたので、更新せず。

XMC10のUSB2.0ポートは、5V/0.5Aのバスパワー

XMC10のUSB

 アプリケーションをディスクからインストールするときに、DVD-RWドライブをUSBでつなごうとしても、バスパワーが足りないので、使えない。

 電源だけを別にとるY字USBケーブルを使って、ACーUSBアダプタ等からUSBの電源を別に供給することで使えるようになる。

ポータブック XMC10の強みは、スマホと同じモバイルバッテリーが使えること。

XMC10と外部バッテリー

 ノートパソコンだとACアダプターを持ち歩く必要があった。しかし、このポータブックはスマホが充電できるモバイルバッテリーやUSBアダプターがあれば、microB-USBケーブルを使って充電しつつ使える。

 USB-Cポートしか持たないMacBook Proのような最新のノートPCは、USB-C専用の充電電圧が出せるポートを持ったモバイルバッテリーやAC-USBアダプターでなければならない。その点、このポータブックは、スマホと同じなので、今持っている充電グッズのほとんどが使えることになる。

ポータブックの充電、USB電流を連続的に計測する

XMC10充電 ポータブック充電電流グラフ
 USBの充電状態は、2台のsanwaのPC700(デジタルマルチメータ)で電圧と電流を測定し、データロガーで連続的にグラフにする。XMC10が内蔵バッテリーを使い果たし、起動できない状態になったところからの充電で、1.47A / 5.07V程度で充電を続ける。
 充電時間は、3時間43分。だいたい、4時間弱。AC-USBアダプタが1.5Aを出せるタイプなので、充電が速い。モバイルバッテリーのように1Aまでという制限がある場合は、もうすこし時間がかかる。 

まとめ

 microSDカードアダプタと64GBのmicroSDカードと合わせて、2万6千円ほどで買ったキングジムの折りたたみ式キーボードのXMC10は、紛れもないWindows 10のネットブックだった。

mxc10とほぼ日手帳 

 ブラウザをChromeにすることで、 MacからChromeへSafariのブックマークをインポートして、Androidスマホやタブレットと同様にブックマークを共有できるから、ブラウズに困ることはない。ATOK 2016が使えるので、学習辞書もMacやデスクトップのWindows パソコンと共有できるから、即ブログ書きにも使えている

 使うほどに、Windows 10の軽さが心地よい。あえてMacBookを買う意味も無くなっていることを感じる。ってか、ノートPCはもうWindows 10のノートの方が良い。

 いままで、MacBook Proを好んで買い換えていた我々の仲間うちでも、数万円(5千円で買った中古のレッツノートとか)のWindows 10のノートPCを使い始めている。年々、売り上げが落ちて材料費や人件費が高騰するという経済的困窮も背景にあるのだが、それ以上に、自慢のアイテムだったはずのMacBook Proが、iPhone と共に「情弱」(と「情弱」を食い物にする胡散臭いアフィリカス連中の定番)のアイテムに成り下がってしまったことへの不満があるようだ。「スタバでドヤる」ことが疎まれ、「スタバ」より「禁煙化されたドトール」に場所替えも起きている。 

 それに、MacBook Proを常に最新モデルに買い換えるスタイルは、売却価格をすこしでも高くしたいがために、アクセサリーの紛失を避け、外箱も本体同様に傷つけないように気を使わなくてはならない。そこらのにわかマカー系ブロガーに多い、

傷ついたら、壊したら… なんて使い方をするようなヤツの使用レポートやレビュー記事なんて、まったく当てにならないから!

 Touch BarのついたMacBook Pro(2016 Late)は、Skylakeの内蔵グラフィックH500系や追加のRX400系のグラフィックでglitch現象という赤いブロックが出る不具合が報告されている。Windows 10とSkylakeでは起きていないことから、Sierraのグラフィックドライバーに問題があるということだ。過去の経験上、こういったバグは治せないままうやむやになることが多い。Seria 10.12.2で改善されたというが…。やっぱり、ソフトウエア的に治らないみたいで、 一時期修理の受付を中止していた。

 MacBook Proのメリットとして「リセールの価格の高さ」を挙げるやつが多いが、「にわか」ほどその傾向が強い。

 「ほら、いまで、ン万円のソフトでやっていた作業も、Windows の千円のソフトで、こんなにできる。良いでしょ?」みたいな、傍からみれば貧乏くさい話なんだろうが、「そんな情報、どっから仕入れてきたんだ?」みたいなかんじで、楽しめている。