さて、前回の続き。

前回のエントリーでPCの音声出力とマイク入力を直結して、WaveGeneの発生した周波数の音声をWaveSpectraで観察した。

今回から、マイク入力を実際にマイクをつないでWaveSpectraで観察してみよう。
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マイクは、ベリンガーのECM8000というマイクの中ではクセのないマイクで安いということになっている。

クセがないとは周波数特性(低い音から高い音までの感度の善し悪し)が平坦であるということ。マイク自体の周波数測定を調べる方法はワシら素人にはできないので、このマイクが公表されている周波数特性であることを信じるしかない。
今回テストするスピーカーは、上海問屋で売っている500円のスピーカー。アンプ内蔵でUSBプラグとアナログのステレオミニジャックが付いている。
USBのケーブルが付いているが、あくまで内蔵アンプのための「給電」だけで、USB-DAC内蔵ではない。

とりあえず、スピーカーは鳴らさないで
部屋の音をマイクで拾ってWaveSpectraで表示してみよう。
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いろんな周波数のノイズを拾っている。生活音とも言う。テレビやパソコンの音、家族の話声… いろいろと入ってくる。無音室という、読んで字のごとく音がない部屋で測定するのであれば、こういうノイズは目立たなくなる。

次に
A(ラ)の音をスピーカで出してみよう。
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ラの音の正弦波をスピーカーで鳴らす。
マイクで拾う音はラの音(440Hz)だけのはずだが? 実際は、こういうかんじで倍音の880Hzなど複雑に音が響いていることがわかる。高音域に一定の間隔でスペクトルが出ているのが観察される。だから、正弦波の本当の音を聞くことは誰もできない。聴神経に直接正弦波の刺激を与えればって、鼓膜を通さない電気信号が本当の原音というわけではないから意味がない。

原音に忠実にスピーカーを鳴らし耳で聞くことは不可能である

ことを、こういう簡単な方法で、自分で確かめることができるので、是非やって欲しい。

我々の世代は旧課程という分厚い教科書で習ってきた。中学の理科や高校の物理学実験、大学の基礎(教養)過程の物理基礎実験などで、こういう音の実験はなんども繰り返し経験している。とことん内容を削られた絵本のような教科書で学んだ、ゆとり世代は、こういったものを見せられても、???なんだよね。
そもそも、 WaveSpectraの横軸の周波数の目盛りが対数になっているんだが、対数ってなに?なところから始めなきゃいけない(笑)
そんなのが、PCオーディオでウンチクを語り、いろんなオーディオ機器の論評を鵜呑みにしちゃう。

とにかく、客観的にデータを観察したり整理したりして、ノイズを減らして評価するという統計学的な基礎知識ゼロ。自分の感覚や感性が一番正しいという中二病に罹患したままヒゲとチン毛が生えちまっているからタチが悪い(タンタンの「立ち」じゃねえぞ(笑))。日本の社会、産業諸々の現場が崩壊しつつある原因の一つでもあるわけだ。
スピーカーとマイクの位置がすこしでもズレるだけで音が変わる。
マイクとスピーカーの位置関係を動かして測定してみよう。どれ一つとして同じ形にならない。こういう現象がなぜ起こるのか?は、物理の教科書に書いてあることだから、わからない人は復習しよう。
ワシも詳しいことは忘れたし、調べる気にもならん。結論は、

スピーカーと聞く耳の位置関係が、少しでもずれると聞こえる音も変わる

ということだけ知っていればよい。
さらに、スピーカーの数が増えれば増えるほど複雑になってくることも実際に鳴らして試せば、おもしろい。

私は一貫して、オーディオはスピーカーとそれを聞く部屋で95%が決まると主張する理由がここにあるわけだ。
こういう不確かさを分かった上で、自分なりの好みの曲を楽しむオーディオ環境を構築していかないと、終わりのない「猿のセンズリ」状態に陥ってしまう。
厳密にスピーカーの音を同じ状態で聞くためには、頭蓋骨にアンカーを打ち込んだりネジでとめてジグで固定し、絶対に位置がずれないようにするといった工夫をするぐらいでなきゃいけない。

スピーカーとリスニングポイントの不確かさを嫌ってヘッドフォンに走るヤツもいる。しかし何度も言うが耳を痛めるので子供は使っちゃいけない。それを薦める大人もタバコを薦めるのと同じで控えなさい。あんたが、ヘッドホンで耳を傷めて聞こえなくなろうが肺がんで死ぬのは勝手どころか医療費増大で社会悪だ。子供まで巻き添えにすんなよ ってことだ。

とにかく、「ケーブルを交換したら、ハイハットの音が前にでてくるようになった」とか「ソリストの息づかいがきこえるようになった」とか、「デジタルアンプとトランジスタアンプの違いが分かる」とか言う人の頭に固定するジグの跡がない時点でダメだってことだな。

気を取り直して、
上海問屋の500円スピーカーの周波数特性をしらべてみよう。
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低い音から高い音へ変化するのをマイクで拾いながら記録していく。ピークの軌跡が赤い線。この時は2955Hzあたりでピーって既に高い音になっている。綺麗に倍音のスペクトルがでているのが観察される。こういうのが二十年前は高いスペクトラムアナライザのモノクロブラウン管で見るしか無かったんだよね。今じゃ、パソコンさえあれば、5千円でできちゃう。
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赤い線が周波数特性ではあるが、マイクの位置、周りのモノや部屋の状態によって常に条件が変わるので、同じ軌跡を得ることはできない。小さな凸凹はあるが、だいたいの形をみて評価するようにしよう。その辺のコツは、いろんなスピーカーを鳴らして、いろんな条件で記録して、いろいろと調べていけば、自分なりのやり方、グラフの意味がわかってくるはずだ。

ドンヤのワンコインスピーカーは、こうやって周波数特性を見ると、意外とクセのないスピーカーサイズを反映した音を出していることがわかる。具体的には、70〜110Hzあたりのズンドコという低音の一番美味しい部分が欠落していて、耳障りな12000Hzあたりの高音がとくに強調して出ている。

残念ながら、私は右耳が11000Hz以上、左耳は12000Hz以上が聞こえない。だから、私がこの上海問屋の500円スピーカを聞くには、さほどチャリチャリ感がなく、値段のわりにいい音だと評価してしまう。ところが、小学生の子供だと16000Hzまでは普通に聞こえているので、こんなシャリシャリ鳴るスピーカは疲れるから嫌いというわけだ。

こうやって、スピーカーがどの音の高さで、どれくらい鳴っているのか?を視覚的に観察できることができてはじめて、自作スピーカを作って遊ぶ、本当の楽しさが味わえるということになるわけなんだけど、それはまたの機会にしよう。