今日は、終日の雨。秋冬に向けての家庭菜園の作業も出来ないので、家事をしながら、空いた時間を趣味に使う。

 先日、発売になった電流帰還式ヘッドフォンアンプAD00031を組み立てることにした。
AD000311
 結論から言うと、こんな簡単なトランジスタが8個、オペアンプ1個の回路で、ちゃんとアンプができるんだな〜という音。静かなところで、ボリュームを上げてもサーというホワイトノイズやブーンという電源の音は聞こえない(電池駆動で電源ICが部品にない)し、スイッチをいれても、ポップノイズはわずか。うむ〜。
 iPhoneに直につなぐのと比べて、高音低音が持ち上がる音になるのは電流帰還式の特徴でもあるんだけど、高音はワシも爺さんになってきたのでほとんど聞こえないから低音がブースト効いているのがわかるくらい。おそらく、ヘッドフォンの種類によって、(iPhone やiPod touch)に直に差すのと音の違いが違ってくるはずだ。若ければ、音の色味が変わるのを実際に聞き分けられるだろう。
 AD00026と違って、入力の音も最大にしても音が壊れることがない。最大の音量には耳が壊れるのでできないが、ボリュームを上げて音が割れるかんじはない。
 アンプに関する詳しい解説は設計者さんのサイトを参照して欲しい。

 今回は単4電池を除く、ケースとケーブル一式まで入っているコンプリートキットだ。
 値段も1万円だからね。組み立て説明書も立派な紙と印刷品質だった。ケースだけで3千円くらいか。基板部品代は2千円と高めに見積もって、あとは製品化するためのコスト分、会社の儲け、設計者へのパテント料…強気の価格設定だが、ポタアンとしては標準的な価格帯に抑えたってことか。

 製作作業時間は、実質1時間ちょい。ブログ用に写真撮ったり、家族に呼ばれて用事をしたり、送り迎えしなければ、すぐに完成してしまうレベルだ。

さて、組み立て作業を以下に簡単に紹介。

 組み立て説明書はフルカラーで見やすい。
 まずは、抵抗を付けていく。プリント基板はスルーホールでシルク印刷、保護膜塗布の至れり尽くせり。ランドのピッチも、誰もがハンダ付けしやすいように、十分なマージンが確保されている。手順通りに作れば、コテが入らないとか、部品が干渉するということは、一切無い。(それほど、部品数があるわけじゃない)。
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 抵抗は、10KΩ、12KΩ、3KΩ、1KΩの順で付けていく。似たカラーコードなので拡大鏡でみて、色が照明ではっきりしないし、念のためにテスターで一個一個計って分類し、基板に取り付けていく。
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 ハンダ付けは、ブリッジしにくいように配慮された設計なので、芋ハンダにならないようにするだけ。
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余った線はニッパーで切る。1mm程度で切っておかないと、最後のケースに入れるときに、アルミケースに接触し動作不良になる可能性がでてくる。ニッパーはバネ付きが便利だ。

抵抗が間違いなく、決められた場所に取り付けられた事を確認して、トランジスタを取り付ける。
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トランジスタの向きは、基板のシルク印刷に従って、種類と向きを間違えないようにつけていく。
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 トランジスタの取り付けが、不揃いだな。こういうのが、傾かずにそろって綺麗に取り付けられるようになれば、一人前ってことだろうけど。ワシはコレで食っていくつもりはないので、どうでも良い。

 イヤホンジャックを取り付けた後、LEDを取り付ける。
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 取説通りにLEDの足にマーキングし、正負を間違えないように曲げて、基板に仮にはめてみて、規定の位置にハンダ付けして固定するのが、ちょい手間がかかるな。
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スイッチ、電解コンデンサ、ICソケットを取り付ける。
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2連ボリューム、ヘッドフォンのインピーダンスに合わせて交換する抵抗を差すピンソケットを取り付けて、電池ボックスをつければ完成だ!
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いいかんじだ。
さっそく、つないで音を出してみよう。
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あれ?音が出ない なんで?? あー、オペアンプのICを差すのを忘れてた!
ちなみに、オペアンプICを差し替えて音色の違いを聞き分けられる人が、楽める設計になっている。
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気を取り直して、IC差して音だし…。なんか、音が変。小さい? いや、プラグが、きちんと刺さっていない時の音みたい。うーん。弄っていると、ドーンと綺麗な音になる…。あれ?
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入力のピンジャックを揺さぶると、音が変わる。あれ? おもいっきり天ぷらハンダがあった。カタカタする。
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もう一度、それぞれをコテを当てて溶かして付け直す。
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おっしゃー、キター!! ズンドコズンドコ いい音じゃん!!

ケースにいれる。
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 アルミケースは、例のシェル状の側と上下の蓋になる部分をネジで止めるんだけど、側は上下でかみ合うようになっているのを、蓋のネジで広げて固定する仕組みになっている。セルフタップのネジなので、ねじ山を潰さないように、基板を入れる前にネジで締めて、タップを切っておいてやると扱いやすい。ネジは黒と2種類あるので好みでどうぞ。
 今回は、ケースの穴開けもしなくて良かったので、すごく簡単だった。
AD00031
 ちなみに、電池の交換は、ボリュームつまみの1.5mmの六角ネジを緩めて外し、ケースの後の蓋のネジを外して基板を引き抜いてからという、一手間かかるのがアレ。
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 中華のポタアンも良いが、倍の値段がする自分で組み立てる電流帰還式ヘッドフォンアンプも、一つは持っていた方が良いんじゃないかな? とくに、ガジェット類を持ち歩いて自慢してナンボの都会の連中は。

 ガジェット好きの集まりに、自作のポタアンを持ち込んで自慢するってのは、オッサンの夢の一つなんだけどね。これは、フルキットだから微妙。でも、PHA-1も買って、二つのポタアンをみんなでブラインドテストしよう!というネタで盛り上がれるぞ。
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 最近のiPhone(iPod touch)で使われることを前提に作られた定番のヘッドフォンは、安物のフルレンジスピーカーと違って、周波数によるインピーダンスの変化が少なくなるようになっているので、「電流帰還式」による音の変化を楽しむということは、あまり期待できないだろう。
 もしかしたら、5千円以下の60Ωとか比較的高いインピーダンスのヘッドホンとかで、AD00031の抵抗をそれに合わせて交換して合わせることで、違いの変化を聞き取れるくらいの差がでてくるのかもしれない。
 実際に、MDR-1Rを、iPhone へ直に接続するのとAD00031を通して聴くの2通りで、家族に小遣いをやってブラインドテストをやってみた。結果は、子供は分かるみたい(間違えるから、完全に聞き分けられるわけじゃない)だ。しかし、妻もワシも違いが分からん。少なくとも、爺さんのワシの耳では、ボリューム全開でノイズらしいノイズはないことしかわからない。
 つまり、AD00031は、(ノイズのない)「静かで」、(アンプを通しても通さなくても差が聞き分けられ無いってことはクセのない)「良質な」アンプってことだな。
 それから、オペアンプICを交換できる点と、つなぐヘッドフォンのインピーダンスに合わせて、抵抗を変更できるという点は、自分で組み立てるアンプだからこそ、自分でできる楽しみになる。

 なお、音源はDSD音源をAIFF変換したものを推奨したい。AACのiTunes Plusでは、圧縮による高音のざらつき、潰れが気になる人(子供くらいだろうけど)がいるかもしれない。



完成品でなおかつ改良されたAD00032もある。

なお、

・エイジングは存在しない。
 機械的に稼働する部品を除いて、電子部品の温度変化による特性の変化で異常に発振する等、耳で聞いて明らかに分かる変化があれば、それは機器の故障等の問題となる。
 人間の感覚は相対的でいい加減なものである。感覚器の閾値は、気分次第で変化してしまう。俗に言われている「エイジング」とは聴く人間の「慣れ」に過ぎない。

・音の善し悪しは客観的に評価できない。
 料理が美味しい、不味いを客観的に評価できないのと同じである。プロの世界でも、「味見は三回まで」とされている理由は、人間の感覚は相対的でいい加減なモノである(大切なことなので二回言う)ことを大前提にしているから。
 いずれネタにする予定だが、中華のデジタルアンプの出力する矩形波は、お世辞にも良いとはいえない。中華のデジアンは「音の味付けが、みんなの好みなだけである」ということが分かっている。お風呂で歌うと上手に聞こえるのは「リバーブ」効果だが、中華のデジアンには、それを明らかに狙った回路設計になっているものもあるようだ。

・すべては、自分が気に入るかどうかである。

・iPhone(iPod touch、Retina iPad、Mac)のヘッドホン端子からの出力の音質は抜群に良い(計測器による測定で可聴音域は完全にフラットでノイズもない)ので、直接つないだヘッドフォンからの(味気ない音)で満足するのなら、ヘッドホンアンプは必要としない。

・本来は、直につないでも小さな音でしかならないヘッドフォンを聞こえる大きさまで音を増幅して聴くために、ヘッドホンアンプは存在する。

・ワシは、Mac Proの表のヘッドホン端子に直に繋いで聴くのと、裏のラインアウトから(まともな)アンプを介して聴く音との差をブラインドテストで聞き分けることができない。高級なヘッドホンを持っていないし。

・かつては、「高価な機器(ケーブルも)は、絶対に良い音が出る」というメーカーやブローカ、それらを鵜呑みにするオカルト・マニアが跋扈していた。しかし、情報化社会の発展と共に、彼らは一笑に付される存在になった。

・最終的には、自分で設計し基板を作って組み立てたアンプで音を出したい。オーディオを趣味とするヤツが行き着く先の一つが、「自分の好みの曲を気持ちよく奏でるためのスピーカーとアンプを自作する」というものなので、それを目指したい。

・鳴りにくいスピーカを大電力で駆動するパワーアンプの製作は、強力な電源の設計や製作のための高度な知識と技術が必要で、ワシらのような初心者(素人)は全く手が出せない。しかし、(低周波)音声増幅回路において、いろんなアイデア(方式や素子)を手軽に試せて、強力な電源設計を必要としないヘッドフォンアンプは、非常に興味深いジャンルである。

・オーディオICを使ったデジタルプリメインアンプが人気である理由の一つは、大容量の電源を必要とせず、安価なAC-DCアダプタが使えるからである。